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改元前に区切りをつける男女たち -時系列分析で平成末の離婚増加を検証してみた-

本記事では月ごとの離婚件数のデータを用いて、時系列を季節要因、トレンド、不規則系列に分解してみます。季節要因を除いてみると、平成末の離婚傾向に対する ”ある特徴” がわかります。

 

日本で3は別れの月ですね。今年はCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)の影響で卒業式が中止になったり、送別会が中止になったりと散々ではありますが、人生で何かひと区切りをつける月でもあったりします。

 

“離婚”という悲しい別れを経験する方もいらっしゃることでしょう。ニュースではよく有名人の離婚について報道されますが、実際のところ離婚件数は増えているのでしょうか? 厚生労働省の人口動態統計を参照することにより、月ごとの離婚件数がわかりますので、2014年1月~2019年12月(本記事執筆時点における最新の公表月)の離婚件数*について考察してみます。

*注意:すべての月に対し速報値のデータを用いています。

 

 

  • 年ごとの離婚件数は?

まずは、各年の離婚件数を棒グラフにしてみます。

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年ごとの離婚件数は、2015年から徐々に減少していますが、2019年に若干上昇に転じています。2018年の離婚件数が212,393件であるのに対し、2019年は212,955件です。

 

参考までに、年ごとの離婚件数と婚姻件数を折れ線グラフにした図を示します。上側の青色の折れ線が離婚件数を、下側の赤色の折れ線が婚姻件数です。似たような傾向をしていますね。そもそも結婚していないと離婚はできないので、離婚件数は婚姻件数にも関係しているはずです。

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  • 月ごとの離婚件数の傾向は

2019年の離婚件数が、その前の年と比較して少し多くなったのはなぜでしょうか。そこで今度は月ごとの離婚件数を折れ線グラフにしてみます。

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このグラフから、離婚件数は明らかな月ごとの傾向(季節性)を持っていることです。やはり顕著なのは3月で、他の月に比べ圧倒的に多くなっており、他には12月も多くなっていることがわかります。ひと区切りの時期に離婚が多いというこの結果は、何となく想像できるのではないでしょうか。

 

ただ、一点気になることがあります。例年4月は同年の3月に比べ急激に少なくなっていますが、2019年4月は若干の減少にとどまっています。

 

  • さらに月ごとの傾向を分かりやすく

今度は月を横軸にし、年ごとの折れ線グラフを重ね合わせてみます。

 

f:id:JMP_Japan:20200304145039p:plain赤色の折れ線が2019年ですが、4月は他の年に比べ離婚件数が多く、3月に比べあまり減少していないことがわかります。

 

2019年4月は平成最後の月です。元号が変わる前に一区切りつけておきたいと考えた夫婦が多かったのではと考えられます。

 

  • 時系列の分解による季節性の除去

時系列のデータは、季節性やトレンドなどいくつかの要素に分解することができます。分解することにより、元の時系列から季節性やトレンドを取り除くことができます。

 

例えば、元の時系列を次の図のように季節要因とトレンド、さらにこれらで説明できない不規則系列に分解することができます。

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そのため不規則系列は、元の時系列から季節要因とトレンドを除いた時系列になります。

 

今回の離婚件数のデータについて、このような分解をした結果を示します*。

 

*時系列の分解方法としてX11法を用いています。

 

◆季節要因

f:id:JMP_Japan:20200304145046p:plain月ごとの傾向を抽出しています。1、2月は値が小さく、3月や12月に値が大きいといった季節性があることがわかります。

 

◆トレンド

f:id:JMP_Japan:20200304145119p:plainトレンドのグラフです。全体でみると減少傾向であることがわかりますが、2015年前半と2018年の後半に山があることがわかります。2015年は3月に離婚件数が非常に多かったことが、2018年は10月に他の年の10月に比べ離婚件数が多かったことが、その時期に山になっている原因です。

 

◆不規則系列

上記の季節要因とトレンドで抽出できなかった時系列を示しています。すなわち、「不規則系列 = 元の時系列 - 季節要因 - トレンド」で計算される系列になります。

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 平成最後の月である2019年4月は、季節要因やトレンドを除いても、非常に値が大きくなっていますので、やはり異常な月であったわけです。

 

他に2018年9月が小さい値として出てきました。次の月である2018年10月が大きな値を示していることから、2018年は9月ではなく10月に離婚をする何かの理由があったと推察されます。筆者にはすぐには思いつきませんが、みなさんでその原因を考えてみてはいかがでしょうか。

 

  • 季節性を除いた離婚件数の推移

最後に下図は、元の離婚件数の折れ線グラフ(青色)に、季節要因を除去した折れ線グラフ(赤色)を重ね合わせています。

 

赤色の折れ線 = 元の離婚件数の折れ線 - 季節要因の折れ線

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赤色の折れ線グラフの数値は、例えば2019年4月であれば、次のように計算されます。

 

21,061(元の時系列) = -36.53(季節要因) + 17,543.89(トレンド) + 3,553.64(不規則系列)

 

  • 季節要因の調整

身近に季節要因がある時系列データは案外多く見つけられます。小売店の売上、電力の消費量、感染症の発生人数などが考えられますが、これらのデータについて、今回の離婚件数の例のように季節要因を調整してから傾向を見ることがあります。

 

総務省統計局では、統計的な考え方や統計情報の読み方に関して分かりやすく説明している「なるほど統計学園高等部」(https://www.stat.go.jp/koukou/index.html)というページがありますが、このページに中に季節要因の調整についてわかりやすい説明が掲載されています(https://www.stat.go.jp/koukou/trivia/careers/career9.html)。

 

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